「真実を見つめる」 2004年6月
これまで水分子の理解を深めることが生命活動をより理解することにつながることを述べてきた。そして H2O と示す水分子は + と – の極性を2つずつ持ちうる双極子で、正四面体構造を取る立体であることも述べた。今回からは20種のアミノ酸の分子構造と結合の特徴について述べる。グリシンと呼ばれるアミノ酸の分子を球モデル(Fig. 1)で示す。側鎖 (side chain) が水素になっている最も小さなアミノ酸である。側鎖は一文字表記では R と記されることが多い。アミノ酸同士が化学結合(ペプチド結合: 共鳴結合 resonance bonding H-N-C=O)することで、その結合の間に残る分子、つまり “残基” となることから、残留物 Residue の R をとっている。腱や靭帯、そして骨、歯などの主要蛋白質成分であるコラーゲン分子 Collagen molecule では、ペプチド結合したアミノ酸の3本の長い蛋白質(α chain ヘリックス)がラセン構造を取るが、グリシンが3残基ごと用いられる特徴を持つ(コラーゲン分子の詳細は後に述べる)。コラーゲン分子は不溶性蛋白質として捉えられている。故に腱や靭帯は人体内で自然に分解されることはない。ヒトは肉も野菜も食す。肉は主に脂質と蛋白質から成っている。少々説明に無理があるかもしれないが、消化できる肉のほとんどの蛋白質は可溶性であるといえる。 NaCl と示される塩が水に溶けることは周知のことである(Fig. 2)。・・・・・以後割愛
参考文献: 大塚 吉兵衛・安孫子 宣光共著: 医歯薬系学生のためのビジュアル生化学・分子生物学、日本医事新報社 1997年