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最新の側弯症のシュロス式運動療法と装具をドイツから

特発性脊柱側弯・運動療法・手技療法

背骨の関節は、手足の関節と違い、ひとつの椎骨に左右上下に関節(椎間関節)を持っていて、更にひとつひとつの椎骨の間には椎間板があります。椎間板と関節の間に脊髄神経が走行しています。このように複雑な構造を持ち、且つ重要な働きを担っている脊柱が成長期に突然彎曲し始めるのが特発性脊柱側弯症です。未だ原因は特定されていません。特発性側彎症では、彎曲角度(Cobb角)が進行しないように装具を用いて背骨全体を支えるという治療を行います(原則として25°を超えた場合)。それでも角度が進行した場合(40°を超える)、手術が必要になることがありますが、その割合は特発性脊柱側彎症全体の20%くらいと言われています。多くの場合、何年もの間、装具を装着して経過をみることになります。しかし、装具は就寝中にも装着しなければなりません(就寝中の装着が効果的であるため)。装具療法は脊柱側彎症に対するさまざまな保存的治療法の中で、概ね医学的効果が認められているものです。しかし、残念ながら動きを制限された筋や関節は少しずつ機能が落ちてきます。凸側の筋群が阻血を起こしたり、筋線維の組織学的変性が生じるなどの報告もあるのです。脊柱側彎症に対する運動療法の効果については専門家の間でも意見が分かれているところです。しかし、それはあくまでも角度の進行を抑制できるかできないかについての議論であり、運動療法の必要性を否定しているのではないのです。

私は、これまでの基礎医学研究と臨床から、以下の点で特発性脊柱側弯症に対する運動療法は必要であると考えています。
1) 関節は動かさなければ機能が低下し、拘縮に至ることがある。
2) 身体の運動を止めると、筋力が2週間で半分になる。
3) 関節の組織学的(顕微鏡でみるレベル)な変化が生じてしまう。
4) 脊椎の運動に関する脳への記憶が変わってしまう。
5) 身体の運動量と質の低下は、心理面にも影響する。
脊柱の湾曲が進行しないように脊柱を装具で支えるということは、同時にこのような代価を支払うということなのです。
手術例の研究論文から、特発性脊柱側弯症の椎間関節包(背骨の関節一つ一つを包んでいる線維性膜)の中の黄色靱帯とよばれるとても柔軟性に富んだ靭帯に組織学的に違いが生じていることが分かっています。その論文に、黄色靭帯の中にある弾性線維(伸縮性のあるバネのような線維)が細くなり、しかも方向性がランダムになっていることが示されています。私も胎仔や胎児の脊椎椎間関節の組織学的研究から、椎間関節の黄色靱帯中にある弾性線維が発達に応じて、機能的に対応してゆく様子を観察しています。
これらの線維は、関節包に在る線維芽細胞という細胞が作っているのです。注目していただきたい点は、線維芽細胞がどのような線維をどれくらい作るかを決める重要な因子として関節に加わる機械的ストレスがあるということです。つまり、関節に加わる機械的ストレスの質や量に応じて、細胞が弾性線維などの合成を変えているのです。結果として前述のような5つの変化を作っているのです。何年も装具で固定され続ける脊椎に適切な運動負荷を加える必要性についてご理解いただけると思います。
では、どのような運動療法が適切なのでしょうか? 関節の動きは脊椎に限らず、関節内運動とよばれる運動ができないと正しく機能しないことが分かっています。この運動は自分自身で行ういわゆるストレッチだけでは不充分なのです。約24対もある脊椎の関節では特に難しいのです。そこに治療者による適切な誘導的な手技が必要になるのです。特発性脊柱側彎症の脊椎の運動性について、最も大切な動きは回旋です。しかし、その回旋が機能的に行われるためには、椎骨一つ一つの関節内の小さな動き(関節内運動)が必要なのです。脊椎は小さな動きの集合として、片方約60°度(左右で120°)回旋することができるのです。Cobb角の進行と共に、この小さな動きが少しずつ悪くなります。結果として、脊椎全体の動きが低下してくるのです。
脊椎全体の動きと、椎骨一つ一つ関節の動きの違いについて図示してみます。体全体の動きだけの運動療法では、特発性脊柱側弯症に対して、より効果的な運動にならないことを理解していただければと思います。

ScoliosisTraction

上の図は側弯のある脊柱に対して、牽引による伸び方の違いを示しています。全体的なこの動きは、椎間関節の小さな関節内運動がなければできないことなのです。

ScoliosisThFacetScoliosisLwFacet

胸椎の椎間関節(図1)は、このように体の前後軸に対してほぼ水平方向に面しています。左右の関節が同じ形状をしていないとA図のような正しい運動はできません。脊柱側弯症では、この椎間関節の大きさに左右差が生じてしまうのです。その左右差が運動性を著しく低下させます。結果として関節包が固く(組織学的には変性という)なるのです。このような差が生じてしまうと、いわゆる自分で行うストレッチだけでは、充分な効果が期待できなくなります。そこで一つ一つの椎間関節に対して、B図のような動きを徒手的に操作することで、関節包(黄色靭帯を含む)の柔軟性を維持する必要が出てくるのです。黄色で塗られている部分が黄色靭帯です。
腰椎(図2)は、胸椎とはまったく形状が異なった椎間関節面を持っています。本来、前後(屈伸)の運動ができるように関節面があるのです。しかし、その動きが円滑に行われるためには、図2に示すような関節内運動(微細な回旋)が必要なのです。

白石洋介

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