「真実を見つめる」2005年3月
前回、哺乳動物では神経細胞や神経線維がないところで、NGF (neuron growth factor), NT3 (neurotrophin 3), BDNF (brain derived neurotrophic factor) などの神経栄養因子が働いており、我々柔道整復師に関係の深い細胞では、間葉由来の線維形成細胞が自己分泌autocrine、傍分泌paracrineとして骨形成に関与していること(Asaumi; 2000)を紹介した。神経細胞は特殊な細胞で、ほとんど最終分化を遂げていると思われていた時代には考えられなかったことである。
骨折仮骨中に無髄の神経線維が新たに発芽sprouting し、しかも軟骨細胞の極近傍に出現することは、これまでの骨折仮骨のリモデリングに対する考えを一変させた(Jian Li; 2001)(Fig. 1)。GAP-43 (growth-associated protein 43) 陽性線維は新たに発芽した末梢神経のマーカーである。PGP9.5 (protein gene product 9.5) 陽性線維は成熟した神経のマーカーである。これらの末梢神経線維が骨折仮骨形成とリモデリングの仮定で実に巧妙に働いていたのである。骨折後3日で血腫部と骨折近傍の骨膜のところに無髄の GAP-43 陽性線維が出現し、7日で軟骨性仮骨部に多くの GAP-43 陽性線維が発芽し、また血管の無い所に神経線維が単独で出現し、14日経過しても新たに形成された woven bone に侵入していたことが何を示すか・・・、大変興味深いことである。・・・・・以後割愛
参考文献: JIAN LI et al.: Bone Reinnervation After Fracture: A Study in the Rat. JBMR, Vol. 16, No. 8, 2001.