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第三回柔道整復基礎医科学シンポジウム

2006年に,京都大学の山中伸弥教授の研究によって誕生したiPS細胞(人工多能性幹細胞: induced pluripotent stem cell)は,再生医療を実現するために重要な役割を果たすと期待されています.わずかな遺伝子操作で体細胞をリプログラミングする技術は再現性が高く,また比較的容易であり,幹細胞研究におけるブレイクスルーといわれ,不治の病とされる疾病に苦しむ方々にとって,暗闇の中に差す一筋の光明になっています. 医科学のこのような進歩の中,これまで柔道整復は日本独自の伝統的医療として,わが国の社会保障制度の一つである保険医療の一翼を担ってきました.不治の病を対象とするものではありませんが,国民の健康を担う一員として果たしてきた役割は決して少なくないと考えます.治療家(臨床家)は,往々にして“我々は実際に治しているのだから医療の責任を果たしている”と考えがちです.しかし,本当にそれでよいのでしょうか? シンポジウムを運営する私たちはそこに留まってはいけないと考えています.iPS リプログラミング技術は,客観的で再現性が高いことで世界に認められ医療技術として受け入れられました.私たち医療に携わる者は,客観性と再現性を求めない医療技術は医学的技術ではないと考えなければなりません. 柔道整復を医科学技術として考える会として,本年も12月15日に第3回 柔道整復基礎医科学シンポジウムを開催いたします.今回は基調講演の演者として,午前に名古屋大学 環境医学研究所 神経系分野II の田口 徹先生より,痛みの研究者の立場から,テーマの決め方をはじめとし,基礎医学研究の心得や良い基礎研究に求められる条件についてご講演いただきます.特別講演として,午後に埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 病態生理部門 部門長の片桐岳信先生をお招きし,進行性骨化性線維異形成症 FOP (Fibrodysplasia Ossificans Progressiva) について,筋内に骨が生じる生物学的メカニズムについてお話いただきます.お二人のお話から,臨床に対する基礎医科学研究が不可欠であることを再認識していただけるものと確信します. これらの講演に続き,午前3名,午後3名の柔整師の基礎医科学研究者が,各々の研究活動の一端を示しつつ,柔道整復の科学的研究(臨床・基礎)の在り方について私論を展開し,皆様と議論できる時間を設けております.いずれも若い柔道整復師たちによる興味深い研究です.中でも,富山大学大学院医学薬学研究部 神経・整復学講座(西条寿夫教授)の高本考一先生のご研究は,日本柔道整復師会による寄付講座として進められており,大いに期待されるところです. ランチタイムには,神戸大学 医学部附属病院医療情報部/大学院医学研究科内科系講座医療情報学分野 準教授の高岡裕先生と発起人(白石洋介)で,柔道整復や鍼灸における臨床や基礎の医科学研究の在り方について討論します.会場の方々を交えて討論したいと願っております. 年の瀬でご多用とは存じますが,どうか奮ってご参加いただき,大いに議論いただけることを願っております.
発起人 白石洋介 (麹町白石接骨院院長・名古屋大学医学系研究科機能組織学 客員研究者)