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脊柱の弯曲(彎曲)の解剖学的理解 -思春期編-

脊柱の彎曲に対する医科学的な正しい理解は、正しい治療を受けるためにとても重要です。日本側彎症学会 (千葉市中央区新宿2-3-18 パルフェボーテ601 ソーテーリア内) は、そのホームページ (http://www.sokuwan.jp/outline.html)で、思春期の側彎症に関するさまざま医学情報を公開しています。その中で「脊柱側彎症とはどのような病気であるか」を、一般の方々にわかりやすいように、以下のように記載しています。

「脊椎(せぼね)が柱状につながった状態を脊柱(せきちゅう)と呼んでいます。正常な脊柱を横から見ると、頚椎は前に、胸椎は後に、また、腰椎は前に向かってゆるやかに弯曲しており、生理的彎曲と呼ばれています。 正常の脊柱は前あるいは後ろから見れば、ほぼまっすぐです。これに対して側彎症では、脊柱が横に曲がり、多くの場合は脊柱自体のねじれを伴います。側彎症のうち、大部分は学童期の後半から思春期に発生します。その多くは、早い時期に発見して治療を受ければ、進行してひどくなるのを止められます。しかし、この年齢の子供たち、特に女子は、背中を裸で見せることを母親にでもいやがりますし、この時期には痛みなどの自覚症状がほとんどありませんので、側彎症が発見されることはしばしば遅くなりがちです。側弯症は、ひとたび脊柱がひどく曲がってしまうと、元には戻りません。したがって、側彎症は、弯曲が進行する前に診断して、早いうちに治療を開始することが何にも増して大切です。後彎症や前彎症は側彎症と合併して三次元的な弯曲異常になることがしばしばあり、側彎症と同様に早期発見と早期治療が重要です。

またこのホームページのQ&Aの項で、「特発性側弯症は運動療法だけで治りますか?」 という質問に対して、「運動療法が有効だという客観的なデータはいまだに発表されていません。徒手矯正、マッサージなども無効です。」という回答がなされています。この回答は臨床医学的には正しいのですが、少し説明が足らないところを感じますし、患者さんのご両親に対する配慮が感じられません。このような専門医師からの回答がなぜなされるのか・・・、それを考える必要があると思います。いくつか理由が挙げられると思いますが、1)医学的な原因がまだ明らかではないことから、病態や治療法の説明に対して、ご両親の理解が得られにくいこと、2)一部の民間療法や柔整・鍼灸の先生方の脊柱の彎曲に対する知識に明らかな違い(理解の不足という問題以前の)があること・・・、これらの2点は大きなことだと思われます。第1の問題は、患者さん教育にもっと力を注ぐことで解決する可能性があります。しかし、第2の問題の解決が難しいのです。

私は医療資格を取得して以来、数々の研修先で、比較的多く思春期の脊柱側彎症の方とご両親に接して来ました。そのために基礎医学形態学研究室でも脊柱の成長に対する興味を失うことはありませんでした。医学博士論文(名古屋大学医学系研究科)も副論文は顎関節のことでしたが、主論文は背椎椎間関節の成長に関するコラーゲン線維やエラスティック線維の成熟と神経線維の関与についての組織学的研究でした。主論文について先行研究を検索すると、意外なことがわかってきたのです。それは脊柱の側彎に関与する筋群の論文でした(文献1)。現在、脊柱側彎症に関与が深い筋群は、脊柱の左右を添うように縦に走行する筋群 intrinsic muscles (内在筋)である可能性が高いとする論が支持されているようです。しかし、この論文(1)では僧帽筋と広背筋の関与も高いことを、棘突起の先端が鋭角に曲がっている事実と胸廓の回旋を伴った変形のパターンから示しています。このような解剖学的先行研究結果は、実際、近年の画像診断の結果と矛盾するものではありません。また正常と脊柱側彎症の筋の組織学的違いから上肢の筋の関与がありうることを示唆している論文もあります(論文2,3)。このような解剖学の立場からの論文は外科的臨床医学のような華やかさはありませんが、「なぜ脊柱が彎曲してしまうのだろう?」という形態学的疑問に科学者として真摯に向き合った結果ではないかと思うのです。確かに運動療法で彎曲の角度が矯正されるとはいえません。しかし、原因が特定できていない現在において、解剖学的、画像診断学的研究から推定されるいくつかの筋の関与を否定できないのではないでしょうか。上肢・下肢と脊柱を結ぶ(直接・間接)筋群の関与に注目した医学的運動学的アプローチは、不幸にも進行し、外科的対応をせざるを得なくなった場合でも、術後の機能回復に無効ではありえないと考えます。

一部の民間療法の方々のいう 「私の治療でまっすぐになるから」 は論外で、これほど無責任な言葉はありません。しかし、脊柱側彎症に対して、すべての運動療法などがすべて無効であるという説明は、実際に側彎症の子供を持つご両親を行き場の無い気持ちにさせているだけであることも理解するべきだと思われます。脊柱側弯に限らず、専門医は患者さん、ご両親、ご家族にとって最後の砦なのです。患者さんとご両親は、脊柱側彎症専門外来を訪れ、経過のレントゲン検査の結果を待つ時間、最後の審判を受けるような気持ちでいることを忘れてはいけないと思います。
医療は癒しであってはなりません。しかし、脊柱側彎症は整形外科専門医だけの治療対象ではないと考えます。角度が戻らないことがわかっていても、手術を受けることになるとしても、手術に至るまで、整形外科専門医や装具士以外の医師や医療従事者による全人的医学的フォローが必須だと考えています。(2009年9月30日記載)

脊柱側彎症に関する近年の論文(遺伝子の関与)(論文4)など、機械的刺激の対する結合組織細胞の分子生物学的反応などの先行研究も紹介しつつ、脊柱側彎症に対する専門医以外のアプローチの必要性を述べていきたいと思っています。

文献
1)Nudelman W. and Reis N. D.: Anatomy of the extrinsic spine muscles related to the deformities of scoliosis. Acta Anat. 1990; 139, 220-225
2) Rena Yarom, Elina Wolf, and Gordon C. Robin.: Deltoid pathology in idiopathic scoliosis. Spine. 1982; 7(5) 463-470
3) Low W. D., et al.: Ultrastructures of nerve fibers and muscle spindles in adolescent idiopathic scoliosis. Clinical Ortopaedics and Relaedt Research. 1983; 174, 217-221
4) Delahaye A. et al.: .Familial CHARGE syndrome because of CHD7 mutation : clinical intra-and interfamilial variability.. Clinical genetics. 2007, 72(2), 112-121

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